相続の流れ

相続手続きには期限がある

相続の始まり 人が死亡すると、故人が有していた財産を一定の者に引き継がせることができます。これを相続といい、亡くなった人を「被相続人」、財産を引き継ぐ人を「相続人」と呼びます。相続については法律(民法)によって、子や親兄弟など「誰がどれだけ亡くなった人の財産を引き継げるのか」が定められています。このため相続人の誰かが他の相続人の同意を得ずに財産を処分してしまうことは認められていません。 人が亡くなった後の手続きや相続には、期限が定められているものが多いので、下記の図に示したように優先度の高いものから順に手を付けていくことが重要です。

相続の流れ

人が亡くなった後の手続き

相続の手続きではまず、市区町村の役所や保険会社、金融機関などにさまざまな届け出をしなければなりません。ただ、届け出にはすぐにやらなければならいものと、数ヶ月先でもよいものと優先順位があります。 下記のチェックリストを参考に手続きが進められます。

■請求する(もらう)手続き■

確認 種類 届け出先 期限
死亡保険金 生命保険会社 すぐに
入院・手術給付金 生命保険会社、損害保険会社 すぐに
簡易保険 銀行など すぐに
団体信用生命保険 (住宅ローンに付帯) 銀行など すぐに
クレジットカードの保険 カード会社 すぐに
生命共済 共済会 すぐに
遺族共済年金 共済会 すぐに
団体弔慰金 共済会、互助会など すぐに
未払い給与、死亡退職金 勤務先 なるべく早く
遺族基礎年金 市区町村役場 なるべく早く
死亡一時金 市区町村役場 2年以内
寡婦年金 市区町村役場 なるべく早く
葬祭費(国民健康保険) 市区町村役場 なるべく早く
高額医療費の請求 市区町村役場 2年以内
高額医療費の還付 税務署 2年以内
葬祭料(船員保健) 年金事務所
埋葬料 年金事務所など 2年以内
未支給年金 市区町村役場、年金事務所 5年以内
遺族厚生年金 年金事務所 5年以内
遺族補償年金 労働基準監督署 5年以内
遺族補償一時金 労働基準監督署 5年以内

■届け出変更手続き■

家族や親族の死後、特に世帯主の父親が亡くなった場合には死亡 届の他に、早めに届け出なければならない手続きがたくさんあります。 公共料金の名義変更をはじめとして、賃貸住宅に家族が同居していた場合などには各種変更手続きも必要になってきます。

確認 種類 届け出先 期限
死亡届 市区町村役場 7日以内
死体火葬埋葬許可申請 市区町村役場 7日以内
世帯主変更届 市区町村役場 14日以内
住居の賃貸契約(借地、借家) 家主、不動産会社、公団等 なるべく早く
公共料金 固定電話、電気、ガス、水道 なるべく早く
NHK受信料 NHK なるべく早く
電話加入権 NTT なるべく早く
損害保険(自賠責、自動車、火災) 損害保険会社 なるべく早く
自動車 陸運(支)局事務所 相続(遺産分割)が完了した後
大型船舶 相続(遺産分割)が完了した後
小型船舶 相続(遺産分割)が完了した後
預貯金の名義書き換え 銀行、ゆうちょ銀行など 相続(遺産分割)が完了した後
株式、投資信託、その他金融商品 証券会社、信託銀行など 相続(遺産分割)が完了した後
貸付金 貸付先 相続(遺産分割)が完了した後
土地、家屋などの所有権移転登記 不動産所在地の法務局 相続(遺産分割)が完了した後
会員権 ゴルフ場など 相続(遺産分割)が完了した後
特許 特許庁 相続(遺産分割)が完了した後
免許、届け出 管轄官庁
所得税の準確定申告 税務署 4カ月以内
相続税の申告・納付 相続人住所地の税務署 10カ月以内

■退会、解約などの手続き■

健康保険や年金などの公的手続き以外にも、民間企業との各種会員契約の退会や解約が必要です。注意したいのがクレジットカードや携帯電話、インターネットプロバイダ、スポーツクラブなどの有料契約です。そのまま放っておくと、本人が亡くなった後も会費や利用料を払い続けることになる恐れがあります。 会員カードや預金通帳の引き落とし記録、クレジットカードの明細書などを調べて手続きを進めます。

確認 種類 相手 期限
銀行、消費者金融、信販会社など 3カ月
銀行、債権回収機関、保証協会 3カ月
銀行、債権回収機関、保証協会 3カ月
銀行
貸付先(債務者)
出資先の機関団体など
保証金の預け先

■すぐやらなくてよい手続き■

相続手続きでは市区町村の役所や保険会社、金融機関などにさまざまな届け出をしなければなりません。ただ、届け出にはすぐにやらなければならいものと、数ヶ月先でもよいものと優先順位があります。 注意しなければならないのは、亡くなった方に借金があった場合に金融機関や保証会社などから返済を迫られるケースです。相続をするのかしないのか決めかねている間は、借金を返済する必要はありません。安易に返済すると、相続を承認したものと見なされることもあるので注意が必要です。連帯保証についても同様です。

確認 種類 相手 期限
借金の返済(注1) 銀行、消費者金融、信販会社など 3ヵ月
債務の承認(注2) 銀行、債権回収機関、保証協会 3ヵ月
連帯保証人の引き継ぎ(注1) 銀行、債権回収機関、保証協会 3ヵ月
預貯金の名義書き換え(注2) 銀行
貸付金の回収 貸付先(債務者)
出資金の引き継ぎまたは回収 出資先の機関、団体など
保証金の回収 保証金の預け先

注1:熟慮期間の伸長が認められた場合、3カ月超えても良い 注2:単純承認で相続人が一人の場合などはすぐできる

相続の開始

人が亡くなると相続が始まりますが、相続人(亡くなった方の家族や親類)は相続を受けるのか、それとも受けない(相続放棄)のかを選ぶことができます。ただし、相続の開始を知ってから3カ月以内にその意思表示をしなければなりません。また、相続の方法には単純承認と限定承認の2通りの方法があります。 亡くなった方(被相続人)が遺したプラスの財産よりマイナスの財産が明らかに多い場合、相続放棄をして初めから相続人とならなかったことにできます。

■承認と放棄■

単純承認   相続人の権利義務を一切承継すること
  相続人が相続財産の一部でも処分した場合
  または相続の開始を知った日から3カ月以内
  に、限定承認や相続放棄の意思表示をしない
 場合などは、単純承認とみなされる
限定承認   プラスの財産の範囲内でマイナスの財産を
  相続すること
  プラスの財産とマイナスの財産のどちらが多
  いのか分からない場合などに活用
相続放棄   マイナスの財産がプラスの財産を明らかに上
  回る場合などに相続を放棄できる
  相続放棄の取り消しは原則認められない

注意点! 被相続人が事業を営んでいたり、財産がたくさんあったりして3カ月以内に相続の承認または放棄を判断できない場合、家庭裁判所に「熟慮期間の伸長」を申し立てることができます。これが認められれば、さらに3カ月の猶予がもらえます。

■限定承認■

限定承認はプラスの財産とマイナスの財産のどちらが多いか分からない場合などに、プラスの財産の範囲内でマイナス財産を承認するというものです。マイナスの財産がプラスの財産を上回る場合でも、被相続人自身の財産を借金の返済などに充てる必要はありません。 つまり、借金がプラスの財産より大きければ、プラスの財産を全て借金の返済に充て、残りの借金(債務)の返済が免除されるというものです。これとは反対にプラスの財産がマイナス分より多い場合は、借金などを差し引いた残りを受け取れます。

限定承認の手続き 相続開始後3カ月以内に相続財産目録と限定承認申述書を家庭裁判所(被相続人の住所地)に提出。相続人全員でしなければならない。

注意点! 限定承認は手間がかかるため、実際に利用する人は少ないのが現状です。また、相続人が複数人いる場合、家庭裁判所相相続人の中から相続財産管理人選任しなければなりません。

■相続放棄■

相続放棄はお金や不動産などプラスの財産より借金などマイナスの財産の方が明らかに多い場合などにとる方法です。 ただし相続放棄をすると、先祖代々受け継いできた土地なども手放すことになります。相続人がマイナスの財産を引き継ぐの を承知した上で、土地などの財産を相続する場合もあります。

相続放棄の手続き ・自己のために相続の開始があったことを知った時から3カ月以内に、家庭裁判所(被相続人の住所地)に相続 ・放棄申述書を提出。 ・各相続人が単独でも放棄できる。 ・放棄の取り消しは原則、認められない。 ・自分が放棄することによって相続人となる(次順位)の人に報告する必要がある。

注意点! 放棄の手続きをする前に、被相続人の預金を引き出して使ってしまったなど、財産を一部でも処分した場合は単純承認と見なされます。また、手続きをした後で故意に財産を隠していたことが分かった場合なども単純承認と見なされます

■熟慮期間の伸長■

相続が始まったことを知った時から3カ月以内に、単純承認、限定承認、相続放棄のいずれかを決めなければなりません。 この3カ月間を法律用語では「熟慮期間」と呼びます。しかし相続財産の調査に時間がかかり、とても3カ月以内には結論を出せないことがあります。こうした場合、期間内であれば家庭裁判所(被相続人の住所地)に熟慮期間の伸長を申し立てることができます。家裁から期間の伸長が認められれば、さらに3カ月期限が延びます。プラスの財産とマイナスの財産どちらが多いか分からないといった時、安易に放棄をしてしまい後から後悔しないためにも、有効な手段と言えます。   注意点! 熟慮期間の伸長の申し立て書式は、裁判所のウェブサイトに記入例付で用意されています。書式をダウンロードして印刷した用紙に、自分で必要事項を記入して郵送することができます。 ただし、申請してから結果が通知されるまで2週間程度かかることもあり、期間伸長が認められないこともあります。伸長の申し立てをする場合は相続の開始から遅くとも2カ月後までに済ませたいものです。

遺言書

財産を持っている人は生前、自分が死亡した後に誰にどのような財産を譲るのかを自分の意思として示すことができます。これを遺言といい、「遺言書」という書面に意思表示を記すことによってなされます。遺言書には決まった様式がありますので、様式を満たしていないと無効になる場合もあるので注意が必要です。

■遺言書は3種類■

遺言書の方式は普通方式の遺言と特別方式の遺言の二つがあります。一般的なのは普通方式の遺言で、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言の3種類があります。特別方式の遺言は「病気で本人の死期が迫っている」 「乗っている船が遭難」「伝染病の発生で隔離されている」 などの場合に作成したものです。 自筆証書遺言 本人がすべて自筆で書き、日付、署名押印が必要。書式に不備 があり無効になったり、第三者が変造や偽造をしたりする危険 性がある。保管場所や保管方法に関して特に決まりがないため、 遺言を作成した人の死後すぐには見つからない恐れがある。 公正証書遺言 公証人が作成する遺言書で、公証役場で作ってもらう。原本が 原則20年間公証役場に保管される。紛失したり、第三者が変 造や偽造したりする心配がない。 秘密証書遺言 自筆で書く必要がなく、本人の署名を除きワープロで作成して もかまいません。第三者による代筆も認められています。公証 役場で公証人に提出する必要があり、遺言の存在は明らかにな るが、その内容は秘密にできる。 各遺言書の詳しい説明図はコチラ

■遺言書の探し方■

自筆証書遺言は家の中や貸金庫など、被相続人(故人)が大切なモノを保管していそうな場所で見つかる可能性があります。 また、被相続人と親しくしていた人や馴染みの不動産業者・建設会社、税理士、弁護士、司法書士などに聞けば、手がかりがつかめるかも知れません。 公正証書遺言は最も見つけるのが容易で、作成されてから原則20年間は公証人役場に保管されます。自宅や遺品などから正本・謄本が見つからないときは、公証人役場に問い合わせてみるのもよいでしょう。 秘密証書遺言は自筆証書遺言と同様、紛失している恐れがありますが、あまり普及していません。作成するには知識も必要になるため、亡くなった方(被相続人)が生前に税理士、弁護士司法書士などに相談していた可能性もあります。 注意点! 自筆証書遺言は最も普及している遺言形式と言えますが、保管場所や保管方法が決められていないため、探し出すのに苦労する場合があります。額縁の裏側や壷の中など、意外な場所から出てくる可能性もあります。

■遺言書の検認■

遺言書が見つかったら、家庭裁判所に検認を申し立てます。ただし、公正証書遺言は検認の必要がありません。 遺言書を見つけた相続人、または遺言の保管者が申立人になります。 申立人は家庭裁判所に遺言書検認申立書 相続人全員の戸籍謄本 遺言者(故人)の出生から死亡までの戸籍謄本 を提出します。 また、申立人が相続人ではない場合、申立人の戸籍謄本も必要になります。 申し立てをすると後日、家裁から検認日が知らされます。検認日は通常、申し立てをした日から数週間から1カ月程度先に設定されます。期日の設定はあらかじめ相談しておくと、希望した日に設定できる場合もあります。 申立人が持ってきた遺言書を開封し内容を確認すると、検認調書を作成して終了します。 最後に、検認済証明書の発行を申請し、証明書を受け取ると遺言を執行することができます。

■遺言の執行■

遺言書で書かれている内容を実現するために、遺言執行者が指定されている場合があります。遺言執行者は相続財産の管理や財産目録の作成など、遺言を実現するために必要な一切の権利義務を持ちます。相続人であっても、その執行を妨げることはできません。 また、遺言執行者がいないときやいなくなったときは、利害関係人(相続人や債権者、遺贈を受けた人など)が、家庭裁判所に遺言執行者の選任を申し立てることができます。 遺言執行者の主な任務

財産目録の作成 財産の管理 相続財産の相続人への分与 預貯金の払い戻しの手続き 遺贈があるときの財産の引き渡し、登記 相続人の認知 推定相続人の廃除または廃除の取り消し